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鹿児島大学 取材記事

Q1. 世界でも有数のCFC認定大学付属病院として、CFC取得に至った背景を教えてください。
欧米の伴侶動物の教育病院では猫診療のためのスペースが当然のように確保されています。鹿児島大学共同獣医学部では*EAEVEによる獣医学教育認証を目指しており、国際水準の教育施設としてCFC認定を目指すこととなりました。
鹿児島県は猫が身近に存在する土地柄です。薩摩藩主島津家の別邸跡である仙巌園には、我が国でもめずらしい猫を祀った「猫神神社」と呼ばれる神社があります。文禄・慶長の役の際、島津義弘公が時刻を推測するために7頭の猫を帯同して朝鮮半島に出兵しましたが、そのうち帰国できた2頭の猫たちを祀っています。猫神神社の慰霊祭には多くの参拝者が訪れます。このような歴史的背景も手伝い、鹿児島では猫が多く飼育されており、鹿児島大学共同獣医学部附属動物病院を受診する猫の頭数も、他大学と比べて多いようです。
「よりよい獣医療を提供すること」は動物病院に課せられた使命です。ソフトおよびハードの両面から、犬だけではなく猫にも優しい伴侶動物のための病院づくりが必要です。今回のCFC認証取得は、前述の獣医学教育認証という実務的な目的もありますが、二次診療施設を受診される「クライアントさん目線」の動物病院づくりも意識しております。もちろん、現動物病院長が大の猫好きであることは大前提ですが…

*EAEVE・・・European Association of Establishment for Veterinary Educationの略。米国獣医学会(AVMA)のCouncil on Educationと並び獣医学教育の国際認証評価機関としてEUおよび周辺国獣医科大学の認証評価を行っている組織。

Q2. 教育機関としての大学付属病院がCFC認定を取得することの意義と将来への展望について教えてください。
鹿児島大学共同獣医学部附属動物病院は教育病院ですので、本学で学んだ学生が獣医師となり、伴侶動物臨床の道に進んだ際、CFCに対する取り組みが将来の職場で活かされ、猫をはじめ、クライアントさん、そしてスタッフへの心配りができる獣医師に成長されることを期待しております。
Q3. どの程度の準備期間、何名程度のコアメンバーによりCat friendly clinic認定取得への動きがあったのでしょうか?

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月1回、合計3回のCFC認定取得のための会議を開催しました。会議には病院長、外科系獣医師2名、内科系獣医師2名が参加していました。猫医療に歯科診療は避けて通れないので、外科系獣医師のうち1名は歯科の専門診療を行なっている獣医師です。この会議に参加した獣医師5名に加え、看護師5名がコアメンバーとなってCFC認定取得に取り組みました。
Q4. 「大学付属病院」という特殊な条件下(公的機関かつ大きな箱、学生を含む多くの人材という点)でのCFC認定申請となりましたが、取得にあたり苦労した点、逆に容易にクリアできた点があれば、写真などを交えながら具体的に教えてください。
鹿児島大学共同獣医学部附属動物病院小動物診療センターを新営するにあたり、CFCの取得をふまえて設計を行ったため、ハード面の基準を満たすという点で非常に恵まれていたと思います。
Q5. CFC認定を取得したことで日常業務(診療・教育・研究を含め)で変化はありましたか?
特に大きな変化はありませんが「猫ファースト視点」での診療を、以前にも増して行うようになりました。
Q6. 日本では獣医大学における猫医学のカリキュラムが一般的ではありません。そのような中でのCFC認定取得となりましたが、「猫医学/猫診療」の教育という点でお考えがあれば教えてください。
確かに猫に特化した獣医学教育プログラムはありませんが、伴侶動物の臨床実習の現場として「猫は犬と異なる動物」であり、猫への配慮を交えた臨床教育の必要性を感じています。本学での教育を通じて、今後社会に出ていく獣医師がこのコンセプトを発展させてくれるものと確信しています。
Q7. 今後国内の動物病院がよりCat friendlyになるために、何が必要であると考えていますか?
猫の来院率は犬と比べて低いと言われています。動物病院体験を通じて猫が感じている恐怖感について、クライアントが自分の猫を擁護しようとする結果です。「動物病院は猫にとって恐怖の対象ではない」という雰囲気作り、すなわち「キャット・フレンドリー」な病院づくりを獣医師とスタッフがチームとして取り組む姿勢が必要です。そのような努力は社会に情報提供していかなければなりません。