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過去の活動報告

JSFM後援セミナー JBVP年次大会2016[獣医師向け]

日程 9月23日(金)10:00‐12:40
講演内容 ① 高齢猫の医療を向上させる
② キャットフレンドリークリニックの構築法
講師 ① Susan Little / Bytown Cat Hospital(Canada)
② Martha Cannon / Oxford Cat Clinic(UK)
座長・通訳:石田卓夫 / JBVP 会長,JSFM 会長,赤坂動物病院(東京都)

アメリカのAAFP(American Association of Feline Practitioner)前会長のSusan Little先生とisfm(International Society of Feline Medicine)理事のMartha Cannon先生による猫医療の底上げとキャットフレンドリークリニックの構築に必要なヒントをご紹介頂きました。
前半のLittle先生のご講演では、高齢猫を取り巻く環境についてカナダと日本は非常に類似しており、犬の飼育頭数はいずれの国において年々減少傾向であることが言及されていました。

  国旗 日本 国旗 カナダ
猫の飼育頭数 1,000万頭 850万頭
猫の飼育率 28% 35%
10歳以上の猫の割合 32% 24%
犬の飼育頭数※ 1,000万頭 550万頭

※日本、カナダにおいて毎年犬の飼育頭数は減少傾向である

猫の飼育頭数が増加していくなかで、世界で共通した課題として犬と比較して猫の来院率が低いことが知られています。また、猫は症状を隠すのに非常に長けた動物であるためご家族の方が病気の早期サインを見逃している可能性が非常に高いというのも現状です。
一見すると健康な6歳以上の猫100頭を用いた調査によると、高血圧症8%、窒素血症29%、高血糖25%、甲状腺腫/T4の上昇 23%であったことが分かり、高齢猫はご家族が気づかないうちに病気に罹患している可能性が非常に高いことが分かります。従って。高齢猫においては健康そうに見えても定期的に健診を実施することが重要であることが分かります。
また、高齢猫での体重減少には気を付ける必要があります。8000頭以上の猫を用いた膨大な調査結果において、11歳以上の猫では体重減少や痩せる傾向にある猫が増加することが報告されており、これは12歳以上の猫のMER(維持エネルギー要求量)が上昇することに起因しています。 大切なご家族の健康を守るため、そして早い段階で異常を見つけ健康で生活の質を保ち長生きさせるために、定期健診の重要性をしっかりとご理解頂くことが大切です!

本プログラムは、メリアル様にご提供いただきJSFMは後援させて頂きました。
この場をかりて御礼申し上げます。

JSFM提供セミナー JBVP年次大会2016[一般市民向け]

日程 9月24日(土)10:20‐11:30
講演内容 フレンドリーキャットの育て方 ‐これからの猫暮らし‐
講師 入交眞巳先生
柴内晶子先生

当セミナーは一般市民向けセミナーとして開講しましたが、一般の方以外にも大変多くの動物看護師、学生の方にお越し頂き、猫への思いと熱気に終始包まれていました。
前半では、臨床現場そしてヒューマンアニマルボンドの観点から柴内先生に動物と人の絆、猫との絆の大切さや病院での猫の恐怖行動を少しでも回避するためにご家族ができることについて、非常に愛溢れるご講演を頂きました。後半では、動物行動学の専門家である入交先生は様々な画像や動画を交えて、どのように病院でフレンドリーな猫にさせることが可能か、ご自身の猫さんの事例などを交えてご紹介頂きました。最後にはお二人で掛け合いをして頂きながら、さらに詳しく臨床家と専門家という観点からディスカッションを深めて頂きました。

猫が病院で見せる行動の背景には、「慣れ親しんでいない物に対する恐怖」があることを獣医療従事者が理解し、さらにご家族の方の協力も必要です。病院についたら、ケージは床の上に置くのではなく地面より高い所(イス、台などがあれば)に置いたり、待合室にいる間はご自宅から慣れ親しんだ匂いのついたタオルでケージを覆ったり、診察室でもあわててケージから出すのではなく、猫が自然と自分から出てくるまで待つ、どうしても出ない猫さんのストレスを最小限にするために上部開放性のケージを使用するなど、こうしたご家族の方の工夫が病院での猫のストレス軽減に効果があり、またそれが診療を円滑にすることにもつながります。さらに、子猫の社会化期(2−7週齢)の間に様々な経験をさせること、15週齢までは学習期間が続くことからもケージに慣らす、人に慣れる、他の動物にも慣らすといったことが重要となります。柴内先生は猫が病院に慣れるためには、診療などがなくても病院までくる練習や病院の待合室に慣れる練習をすることをご家族に推奨しているとお話しておりました。

では、既に社会化期を過ぎた猫さんはもうどうすることもできないのでしょうか?動物園や水族館では、動物と獣医師双方の安全を守るといった観点からも「ハズバンダリートレーニング」という手法が取り入れら得ています。これは、動物園や水族館で獣医師が健診や治療を行うことを目的に、動物が自ら特定の部位や体制を合図に従って行うことを「遊び」の一貫として訓練する手法です。この手法は社会化期が過ぎた成猫においても実施可能で、顔を触る練習から徐々にはじめ、そこからお薬の飲ませる練習や目薬の練習へおやつをうまく利用しながら馴化することが可能となります。

これからフレンドリーな猫さんを増やしていくためにも、病院とご家族、猫さんの三者間の協力は欠くことができません。一頭でも多くの猫さんが健康で長く生きられるために、まずは一頭でも多くのフレンドリーな猫さんを増やしませんか?

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